アンコール・トム 東南アジアの古代文化 アンコール遺跡
アンコール・トム @Just a few photos

東南アジアの古代文化

インド美術の単なる模倣ではなく、諸民族の独創性もはっきり認められる。

  • カンボジアのアンコール・ワット(都城寺院)の遺跡:クメール美術の最高峰。
  • アンコール・トム(大都城):城壁で囲まれた首都の跡で王権と結びついた当時の宗教の性格を伝える。
  • ボロブドゥールの塔:ジャワ島中部に残る独創性豊かな大乗仏教遺跡。

東南アジアの古代文化

宗教

ベトナム人は、中国諸王朝の支配下にあった時代に、生活の諸面にわたって中国文化を導入してきた。この傾向は10世紀以後の独立時代においても変わらなかった。とくに支配階層の間ではこの傾向が強く、科挙制度が採用され、漢文が読み書きされ、儒教が学ばれ禅宗などの中国仏教が信奉されている。ベトナム人以外の諸民族の文化は、インド文化の影響のもとに発達した。商人の往来や植民者の来住とともに移植されたインド文化は、ヒンドゥー教大乗仏教を主体としたものであったが、これらはまず王侯など特権階級によって、自己を権威づける目的で受入れられた。東南アジア各地に残る大建造物や、王侯たちが刻ませたサンスクリット語の碑文が、このことを如実に語っている。

仏教伝来要図
仏教伝来要図©世界の歴史まっぷ

その後、スリランカ系の上座部仏教が、モン人に端を発し、11世紀から14世紀にかけてミャンマー人・タイ人・クメール人など大陸部の諸民族の間に広まった。パーリ語で書かれた仏典を伝持するこの仏教も、はじめは王侯たちによって受入れられたが、出家者集団であるサンガ(教団)を在家の一般信者が支えるという慣習も定着し、これによって仏教の民衆化はさらに進んだ。諸国の王たちは、このような仏教の擁護者として、また仏教の理想の実現者と称して統治した。

一方、中国系の大乗仏教が伝わったベトナムでは、黎朝時代(15世紀〜18世紀)になると儒教・仏教・道教の3教の融合が進み、民衆の信仰として広くおこなわれた。諸島部へも仏教・ヒンドゥー教が伝わっている。仏教では大乗仏教が、ヒンドゥー教ではシヴァ派が有力であった。

東南アジアの諸民族のあいだでは、これら外来の宗教とならんで民族固有の精霊信仰もおこなわれていた。ミャンマー人のナット信仰、タイ人のピー信仰などであり、アニミズムを本質とするこの種の信仰は今日なお諸国の民衆の間に広くみられる。

大陸部・諸島部ともに、宗教の伝播にともなってサンスクリット語やパーリ語が伝わり、学僧たちの間で共通語として用いられ、さらに諸民族の言語に多くの語彙を送りこんだ。

東南アジアへはまた南インド系の文字(古代のインド亜大陸で広く用いられたブラフミー文字の一分派)が伝わり、諸民族により多少の改良を加えられつつ用いられた。今日、大陸部の上座部仏教国で用いられているのはこの系統の文字である。

東南アジアで発見される碑文は、はじめサンスクリット語やパーリ語で書かれていたが、やがてクメール語・マレー語・モン語・ミャンマー語といっった民族の言語で書かれるようになる。
また『マヌ法典』に代表されるヒンドゥー法典が為政者に尊ばれ、ジャータカなどの仏教文学、『マハーバーラタ』『ラーマーヤナ』をはじめとするヒンドゥー教文学が愛好された。

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美術

アンコール・ワット

美術活動も宗教と関係を持ちつつ行われた。しかしインド美術の単なる模倣ではなく、諸民族の独創性もはっきり認められる。
カンボジアのアンコール・ワット(都城寺院)の遺跡は、12世紀前半のスールヤヴァルマン2世が立てた5塔3層の石造建築であるが、その建築様式と回廊壁面の浮彫りは、クメール美術の最高峰を示している。この寺院ははじめヒンドゥー教のヴィシュヌ神と国王をまつったものであったが、のち仏教寺院にもなっている。(世界遺産:「アンコール遺跡」)

アンコール・トム

アンコール・ワット遺跡の北方1.5kmにあるアンコール・トム(大都城)は、一辺3kmの正方形の城壁で囲まれた首都の跡である。現存する城壁は12〜13世紀のジャヤヴァルマン7世が建造したものであるが、9世紀末のヤショーヴァルマン1世による創建以来、幾回か造営されており、王権と結びついた当時の宗教の性格を伝えている。(世界遺産:「アンコール遺跡」)

ボロブドゥール

ジャワ島中部に残るボロブドゥールの塔もまた独創性豊かな大乗仏教遺跡である。一辺約120mの正方形の基盤の上にたてられた9層・塔状の建造物は、シャイレンドラ朝時代の8世紀後半〜9世紀初めにたてられ、仏像彫刻や壁面浮彫りなどにすぐれたものが多い。(世界遺産:「ボロブドゥール寺院遺跡群」)

宋胡録焼

スコータイ朝のタイでは、中国から伝わった製陶技術の影響のもとに、多数の窯が開かれた。タイ陶磁の伝統はその後の時代にも継承され、製作された陶器・磁器は世界の各地に輸出されている。日本では宋胡録すんころく(タイ中部の地名スワンカロークの訛り)の名で呼ばれ、茶人に珍重された。

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