アンシャン・レジーム われら失いし世界 旧制度のフランス
アンシャン・レジームの風刺画「過去」 第三身分者が聖職者と貴族を背負う ©Public Domain

旧制度のフランス

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旧制度のフランス

旧制度(アンシャン=レジーム Ancien régime) と呼ばれるフランス革命前の社会は、その正当性をほとんど失っていた伝統的な身分制を残していた。第一身分の聖職者、第二身分の貴族がさまざまな特権をもつのに対し、市民や農民など第三身分の平民は生産し、経済を支えているにもかかわらずなんら政治的権利を与えられていなかった。封建制・領主制はそのシステムの実質的な力を失っていたが、聖職者・貴族の封建的諸特権は絶対王政により支えられていた。絶対王政では王の権力は絶対とされているが、王も伝統や慣習のさまざまな制約にしばられており、また地域や諸身分の利害を無視しては統治はできなかった。

旧制度のフランス

王政の危機
フランス革命の構造図 ©世界の歴史まっぷ

旧制度アンシャン=レジーム Ancien régime) と呼ばれるフランス革命前の社会は、その正当性をほとんど失っていた伝統的な身分制を残していた。第一身分の聖職者、第二身分の貴族がさまざまな特権をもつのに対し、市民や農民など第三身分の平民は生産し、経済を支えているにもかかわらずなんら政治的権利を与えられていなかった。封建制・領主制はそのシステムの実質的な力を失っていたが、聖職者・貴族の封建的諸特権は絶対王政により支えられていた。絶対王政では王の権力は絶対とされているが、王も伝統や慣習のさまざまな制約にしばられており、また地域や諸身分の利害を無視しては統治はできなかった。

聖職者・貴族はフランス全人口2千数百万人中の55万人前後、人口の2%程度で、免税の特権や農民に対する年貢の徴収権などをもっていた。大司教・司教ら高位聖職者や重要な官職をえて高額な俸給や年金をうけている宮廷貴族らエリートに対し、下級聖職者・地方貴族などの多数は経済的にも苦しい生活を送っていた。

特権階級には古い家柄の旧貴族に、平民出身の新貴族が加わっていた。富裕市民の一部が土地や爵位を手に入れ貴族になりあがったのである。官職を買収して世襲した新貴族には、高等法院の判事など「法服貴族」もいた。新貴族と旧貴族の対立もあったが、貴族には銀行業・貿易業など経済分野で活躍するものもいた。貴族と市民上層部は、エリートとしてある種の均質性も形成しつつあった。自由主義的な貴族とブルジョワ市民が啓蒙思想のメッセージをもっともよく理解し、反体制運動を指導し、連帯した。フランス絶対王政はこうしたエリート層をコントロールできなくなっていた。

第三身分は決して均質な階層ではなかった。ブルジョワジーと呼ばれる富裕市民のなかでも、銀行家・大商人・企業家・地主など上層市民は特権身分と利害をともにしていた。弁護士・公証人・文筆家・医師・教授など自由職業者、新興商工業者は旧制度の矛盾にもっとも批判的であった。都市の小手工業者、職人・労働者など下層市民は、サンキュロット(貴族のはくようなキュロットをはかないものの意)と呼ばれ、革命期にもっとも急進的な行動を示した。

最大多数は農民であった。農民も富裕なものから貧農まで広い幅があった。農民の大半を占めるのがメチエと呼ばれる折半小作農であった。彼らは、租税、領主的·封建的諸貢こうのう、教会の十分の一税などのいっさいの負担を負っていた。領主と教会の課税は農業生産の約20%におよんだ。

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