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文学

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グリム童話 ヘンゼルとグレーテル挿絵(アーサー・ラッカム画/WIKIMEDIA COMMONS)©Public Domain

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19世紀過去に回帰し歴史や民族の伝統を尊重するロマン主義。19世紀半ば、資本主義経済の問題点や科学技術の発展などから、人生の現実をありのまま表現する写実主義や人間を科学的に観察し社会の矛盾や人間性の悪の面を描写する自然主義が生まれた。

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ロマン主義文学

フランス革命が反対派を抹殺するジャコバン派の独裁、さらにはナポレオン1世による他のヨーロッパ諸民族の抑圧という結果に終わると、理性に対する信頼は失われ、ドイツを中心に個人の感情や想像力を重んじ、過去に回帰して歴史や民族の伝統を尊重するロマン主義が支配的になった。

ドイツ

ドイツでは、古典主義を完成させたゲーテ Goethe (1749〜1832)やシラー Schiller (1759〜1805)につづいてロマン主義がさかんになった。夢に見た青い花を求めて放浪する詩人を主人公にした『青い花』を代表作とするノヴァーリス Novalis (1772〜1801)、言語学者として民族の伝統の研究をおこなうと同時に『童話集』を編集したグリム兄弟 Grimm (兄1785〜1863, 弟1786〜1859)。シュレーゲル兄弟 Schlegel (兄1767〜1845, 弟1772〜1829, 兄弟で雑誌『アテナウム』を編集してロマン主義運動を推進した)、 七月革命後はパリに居住し革命詩人と呼ばれたハイネ Heine (1797〜1856, 代表作『歌の本』)らが登場した。

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グリム童話 ヘンゼルとグレーテル挿絵(アーサー・ラッカム画/WIKIMEDIA COMMONS)©Public Domain

フランス

フランスでは、ネッケルの娘でナポレオンに迫害され外国に亡命したスタール夫人 Madame de Staël (1766〜1817, 代表作『デルフィーヌ』)、政治的には反動的で革命中はイギリスに亡命し、のちに外相に就任したシャトーブリアン Chateaubriand (1768〜1848, 代表作『アタラ=ルネ』)、人道主義的立場で書かれた大河小説『レ=ミゼラブル』の作者で、共和主義者であったため第二帝政を否定したヴィクトル=ユゴー Hugo (1802〜85)などがいる。

イギリス

イギリスでは、敬虔な汎神論的自然観を展開し最初は共和主義に共鳴しながらも、のちに保守主義に変質したワーズワース Wordsworth (1770〜1850, 代表作『叙情詩選』)、ギリシア独立戦争に参加し病死した情熱詩人バイロン Byron (1788〜1824, 代表作『チャイルド=ハロルドの巡礼』)、詩集『湖上の美人』や中世騎士を描いた『アイヴォンホー』を残したスコット Scott (1771〜1832)などがいる。

アメリカ

アメリカでは、楽天的な個人主義を謳歌するエマーソン Emerson (1803〜82, 代表作『自然論』)、ピューリタニズム(清教主義)の厳しさ描いた『緋文字ひもんじ』のホーソン Hawthorne (1804〜64)、アメリカの自然をうたい自由と民主主義を賛美した詩集『草の葉』を書いたホイットマン Whitman (1819〜92)、さらにはアーヴィング Irving (1783〜1859)やエドガー=アラン=ポオ Edgar Allan Poe (1809〜49)などがいる。

ロシア

ロシアでは、ロシア国民文学の創始者といわれたプーシキン Pushkin (1799〜1837)がでた。彼は作品の民主的傾向によりいったんは南ロシアに追放され、バイロンの影響をうけてロマン主義的作品を残した。デカブリストの反乱鎮圧後に追放刑は解かれ、検閲のもとで作家活動をおこなった。『オネーギン』『プガチョフ反乱史』『大尉の娘』など数多くの作品を残したが、貴族・農民・勤労者などあらゆる社会層を対象とし、文学のジャンルも多岐にわたっている。

写実主義文学

19世紀の半ばから後半に入ると、資本主義経済の問題点がしだいに噴出するようになり、市民社会の成熟や科学技術の発展と相まって、非現実的なロマン主義の傾向にかわって、人生の現実をありのまま表現しようとする写実主義 Realism や、人間を科学的に観察し、社会の矛盾や人間性の悪の面を描写する自然主義 Naturalism が生まれた。

フランス

その先駆けは、軍隊や聖職者などの特権階級に敵意と野心をもつ人間を描いた『赤と黒』を代表作とするフランスのスタンダール Stendhal (1783〜1842)や、風刺家で『ゴリオ爺さん』『人間喜劇』などで当時のフランスの世相を生き生きとしかし批判的に描いたバルザック Balzac (1799〜1850)である。

写実主義はフロベール Flaubert (1821〜80, 代表作『ボヴァリー夫人』)によって確立し、その流れはその他の諸国におよんだ。

ドイツ

ドイツでは、包容力と時代への順応性により自然主義以後の文学の推移を体現したハウプトマン Hauptmann (1862〜1946, 代表作『織工しょっこう』『沈鐘ちんしょう』))。

イギリス

イギリスでは、イギリス上流階級の虚栄に満ちた生活を風刺した『虚栄の市』を書いたサッカレー Thackeray (1811〜63)、『二都物語』や『クリスマス=キャロル』『オリヴァー=トゥイスト』などをとおしてフランス革命の現実やロンドンの下層階級の生活を活写したディケンズ Dickens (1812〜70)などがいる。

ロシア

ロシアでは、社会の下積みとなっている弱者に暖かい同情をみせる『外套』、官吏の不正を暴露しツァーリズムを批判する『検察官』、亡命先のローマで書いた名作『死せる魂』を残したゴーゴリ Gogol (1809〜52)がロシアの写実主義文学を確立した。

さらに高利貸しの老婆とその妹を殺害した大学生と一家の犠牲となった娼婦を対峙させた『罪と罰』や、人間の魂の救済をテーマとした『カラマーゾフの兄弟』などを書き、当初の社会主義的傾向によりシベリア流刑を経験した文豪ドストエフスキー Dostoevskii (1821〜81)、農奴解放後のロシア社会と無気力なインテリを描いた『父と子』(その他『猟人日記』『処女地』)の作者で、農村を題材とする多くの作品を残したトゥルゲーネフ Turgenev (1818〜83)、ナポレオンのロシア遠征を背景とする大河歴史小説『戦争と平和』ではロシアの知識人の苦悩を、『アンナ=カレーニナ』では愛のない結婚をした女性が真実の愛に目覚めつつも社会的規範によって悲惨な最期をとげる経過を描き、資本主義の偽善と矛盾を暴露しながらも人間の道徳性に期待し、キリスト教的人道主義の立場をとったトルストイ Tolstoi (1828〜1910)、『桜の園』で没落しつつあった貴族階級の姿をペーソスをもって描いたチェーホフ Chekhov (1860〜1904)などがいる。

自然主義文学

19世紀後半から自然主義運動がおこり、社会の矛盾を追求する作家が出た。

フランス

フランスのゾラ Zola (1840〜1902)は『実験小説論』で自然主義文学の可能性を論じ、『居酒屋』のなかでは絶望的な庶民の生活と女性の生きざまを描き、さらに続編としての『娼婦ナナ』では下層階級出身のナナがその容貌によって上流階級に食いこみながらも最後には梅毒によって悲惨な死を迎える現実を描いてみせた。ゾラは現実の社会の動きにも敏感に対応し、ドレフュス事件では『私は弾劾する』というパンフレットを発行して共和制派として軍部を非難し、ドレフュスの再審を要求した。またモーパッサン Maupassant (1850〜93)はプロイセン=フランス戦争にも参加したが、フロベールに師事して写実主義を学び、『女の一生』のなかでは夫の無理解と粗暴に苦しむ救いようのない女性の生涯を描いた。

ノルウェー

ノルウェーではイプセン Ibsen (1828〜1906, 作品『ペールギュント』『民衆の敵』)がでて、『人形の家』を世に問い女性を取り囲む環境の厳しさと女性解放運動への展望を描き、世界演劇史に一時代を画し、「近代演劇の父」と呼ばれた。

スウェーデン

スウェーデンのストリンドベリ Strindberg (1849〜1912, 代表作『令嬢ジュリー』)は没落商家の女中を母として生まれ、少年時代から反逆と放浪の人生を送った。職を転々とかえ、3度結婚して3度離婚し、女性を愛するがゆえにかえって女性を憎悪し、結婚生活に対する鋭い批判者となった。

参考

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