ロンダニーニのピエタ
ロンダニーニのピエタ(ミケランジェロ作/スフォルツェスコ城美術館蔵)Wikipedia

ロンダニーニのピエタ


ロンダニーニのピエタ

ミケランジェロは陰鬱で寡黙、態度も粗暴なところがあったが、どこか人を惹きつける魅力をもっていたようである。彼の芸術家としての腕は多くの人の認めるところで、制作依頼は絶えなかった。フィレンツェの市庁から依頼されたのは、大理石の大作『ダヴィデ像(ミケランジェロ)』、レオナルド・ダ・ヴィンチとの競作が話題をさらったパラッツォ・ヴェッキオの大会会議の壁画の制作、ユリウス2世(ローマ教皇)から依頼されたのは、記念墓碑、そしてローマのシスティナ礼拝堂天井画などである。彼は助手も使わず、4年間、足場の上にへばりついて、あの巨大な壁画を独力で完成させた。彼はその後も、システィナ礼拝堂の正面壁画「最後の審判(ミケランジェロ)」の制作、サン・ピエトロ大聖堂の円蓋の設計など依頼されているが、彼自身が好んだのは大理石の彫刻であった。彼は石に関する知識と技術にすぐれ、イタリアで最良の大理石の採石場であるカラーラの石切り場にしばしば足を運んで石を選んだ。彼は「私は余分なものを取り除くだけで、そうすると彫刻がそこに現れるのだ」と述べている。

「ロンダニーニのピエタ」は彼が工房において死ぬ前日まで手を加えていた作品である。大理石を削ぎ落としたノミの跡を残し、痩せ細った肉体を掘り出しているこの作品は、子の死に対する母の悲しみを、いっさいの余分なものを取り除いて表現しようとしたのであろうか。

参考

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